CASE STUDY

「もったいない」から「いただきます」へ。下鴨茶寮総料理長が語るフードロスへの想い

ライスジュレFUTUREサステナブル

出荷時に傷がついてしまうなど、さまざまな理由で出荷規格から外れてしまった「規格外野菜」は、美味しくいただくことが出来るにも関わらず廃棄されてしまうという現状があります。昨今はフードロスの観点から問題視されておりますが、この状況を何とかしたいと立ち上がったのが、京料理茶懐石の老舗「下鴨茶寮」。美味しいのに無価値化されてしまう野菜を、日本の伝統料理「すりながし」へと生まれ変わらせました。この「すりながし」にはヤンマーマルシェの「ライスジュレ」も使用されています。

今回は、歴史と伝統に彩られた京都「下鴨茶寮」の総料理長・本山直隆さんにお話を伺い、フードロス問題に取り組まれた想いや、ご自身も開発に携わった「料亭のすりながし」誕生秘話について教えていただきました。

本山直隆さん(もとやま なおたか)さん
1981年佐賀県生まれ。東京で日本料理の修業を重ね、2016年3月、「銀座 下鴨茶寮 東のはなれ」料理長、2017年6月「下鴨茶寮」総料理長に就任。

食材の全てを余すところなく使うのは料理家の使命

― 一般的に外食産業ではどのような食品廃棄がありますか?

野菜の皮や根元の部分、お魚の頭やアラなど、食べられない部分やお客様へお出しするには見た目が良くない、商品価値が低い部分は廃棄することになります。

― 料亭において、捨てられてしまう部分を利活用することはあるのでしょうか。

出汁をとった後の昆布を佃煮にする、鰹節をふりかけにすることはありますね。春であれば、硬くてそのままでは食べることのできないウドの皮を細かく刻み、きんぴらにして提供しています。日本には「もったいない」の文化が根付いていますし、食材の全てを余すところなく使うのは、料理家の使命でもあると考えています。

1856(安政3)年創業。風格ある数寄屋造りの建物が歴史を物語っています。

無価値化された野菜を、おいしくて体にやさしい一品へ

― 下鴨茶寮さんでは、商品価値を失った野菜ですりながしを作っているとお聞きしました。

新型コロナ禍においては多くの飲食店が休業を余儀なくされ、出番を失った多くの野菜が廃棄処分となりました。また、「市場ニーズとは合わないから」と規格外として扱われる野菜や、出荷時に傷が付いたり折れたりして商品価値を失ってしまった野菜も処分されているのです。

生産者さまが手塩にかけて育てた野菜が、美味しく食べることが出来るにもかかわらず無価値化されてしまう。この状況を何とかしたいと、廃棄予定の野菜を使ったメニューの開発を始めたのです。

開発当初は野菜のポタージュが候補に挙がったのですが、生クリームのような動物性食材を使うと、洋食のイメージが強くなってしまいます。下鴨茶寮らしさを出したいと試行錯誤した結果、日本の伝統料理のひとつ「すりながし」へとたどり着きました。

生産者さまがこだわって育てられた野菜をペースト状にし、料理家が引いた特製一番出汁と体にやさしいライスジュレを合わせました。口当たり優しく、のどごしなめらかに仕上げています。こちらは「料亭のすりながし」として下鴨茶寮のオンラインショップで販売している他、お店でも時々提供しています。

― そもそも、「すりながし」とはどのようなお料理なのでしょうか。

すりながし(擂り流し)は、野菜や魚介類をすりつぶして出汁で伸ばした一品です。懐石料理では椀物(わんもの)として提供され、透明なおすましのような扱いになります。夏であれば涼を呼ぶ一品として、冷製で仕立てたすりながしをお出しすることもありますね。

すりながしは、野菜や魚介のペーストと出汁を合わせ、火にかけて作ります。しかし、お客様へお出ししてしばらくすると野菜などが沈殿して2層に分離してしまいます。そこでくず粉や片栗粉を使ってとろみを付け、ペーストと出汁を繋ぎ合わせているのです。

澄んだ色のすりながしを作るときはくず粉、乳白色のすりながしを作るときは片栗粉、またでんぷんを含む芋類であればすりおろして加熱するなど、お料理にあわせてとろみ付けの素材を選んでいます。

お米由来の「ライスジュレ」ですりながしへとろみ付け

―下鴨茶寮「料亭のすりながし」のとろみ付けには、ヤンマーの「ライスジュレ」を使っていただきました。

(参考)ライスジュレ
国産米と水だけで作ったペースト状の食材。さまざまな食品における食感や風味の改良にご使用いただける、ヤンマーのオリジナル商品です。

元々和食には、お粥をつぶして粘り気のあるソースを作り、出汁へとろみを付ける調理法があります。ただし、お米は粘り気が強く、素材由来の甘味がしっかり出るので、野菜や魚介類の持つ風味や旨味が弱まってしまいます。

ですが、今回とろみ付けに使ったライスジュレは原材料がお米であるにもかかわらず無味無臭で、いい意味で他の食材の邪魔をしませんでした。レシピ開発のタイミングではじめてライスジュレを試したのですが、「こんな便利な食材があるのか!」と驚きましたね。

― くず粉や片栗粉でとろみを付ける調理法との違いを教えてください。

くず粉や片栗粉は水で溶かしてから使用しますので、その分素材の風味が薄まります。しかしライスジュレを溶かす水は僅かなので、すりながしへとろみをつけても野菜や出汁の味をしっかり感じることができました。

加えて、ライスジュレが持つ保水性も魅力的です。くず粉や片栗粉でとろみを付けた際はお料理が冷めると固まってしまいますが、ライスジュレは時間が経ってもトロッとした状態が続きます。コスト面においても、くず粉より原材料費を抑えることができるのは、飲食店としてありがたいです。

― その他、ライスジュレに感じたメリットを教えてください。

海外からのお客様でグルテンフリーを希望される方や、小麦アレルギー・乳製品アレルギーの方にも、いつもと変わらず美味しいお料理を提供できることでしょうか。例えばどら焼きの皮やアイスクリームなどを、小麦フリー・乳製品フリーでお出しできます。ライスジュレを使って、和食に合う米粉麺を開発しても面白いかもしれませんね。

生産者さんと手を取り合い、フードロス問題に取り組む

― 今後、下鴨茶寮さんとして注力していきたいことを教えてください。

本来食べられるはずの食品が、さまざまな理由で捨てられてしまう。このフードロスの問題には、どの飲食店も向き合っていくべきです。生産者さんは、せっかく育てた野菜が無価値化してしまうことへ、とても心を痛めていらっしゃいます。生産者さんと直接お会いして話を伺い、何が一緒にできるかを考え、料理人として新しいものを作り出すお手伝いができればと思います。

料理家は料理を作るのが仕事ですが、飲食店は生産者さんから食材を提供していただいてはじめてお客様をお迎えすることができます。だからこそ、生産者さんが抱えている問題は一緒になってクリアしたいですし、互いの問題を解決できる商品を世に送り出すことで、食産業はますます面白くなってくるのではないでしょうか。

まずは「料亭のすりながし」を多くの方に召し上がっていただくことで、フードロスの問題、さらにはライスジュレのことを一般の方に知っていただく最初の入り口になればいいですね。

料理家の手によって「もったいない」から「いただきます」へと生まれ変わった「料亭のすりながし」。その商品化において、ライスジュレが一翼を担っていることを光栄に思います。一次産業の現場や食産業など、食を愛するすべての人に寄り添い、幸せの循環を生み出すことをミッションとするヤンマーマルシェでは、今後も下鴨茶寮さんの取り組みについて注目していきます。

「料亭のすりながし」は下鴨茶寮オンラインショップからご購入が可能です
https://www.shimogamosaryo.co.jp/shop/products/detail/509

※ 記事は2023年3月時点のものです。