TIPS

Premium Marché 特選素材 6月は「梅とハチミツ」

私たちは「梅の実が熟す頃の雨」を梅雨(つゆ)と呼び、さらには梅干し・梅酒作りといった“梅仕事”を楽しみながら、雨の季節を過ごします。また、梅をはじめとする植物の受粉にはミツバチの存在が欠かせません。2月の梅の開花時期にはミツバチが梅の花を訪れ、5~6月になると、山や畑、さらには街路樹の植え込みや公園の花壇などを飛び回って蜜を集めます。

6月のプレミアムマルシェは「梅とハチミツ」をテーマに、和歌山県・口熊野地方で南高梅(なんこううめ)の有機栽培や昔ながらの梅干作りに取り組む深見梅店と、大阪市・梅田で都市養蜂を行う梅田ミツバチプロジェクトに話を伺いました。

人と環境に優しく。南高梅の有機栽培と昔ながらの梅干作りを行う「深見梅店」

生まれ育った故郷が“オーガニックの梅の郷”になることを目指して

世界遺産・熊野古道の玄関口である、和歌山県西牟婁(にしむろ)郡上富田町。四代続く南高梅干専門店の深見梅店は、和歌山県内で育った選りすぐりの完熟南高梅で仕込む梅干しを、昔ながらの製法を守りながら製造・販売しています。さらには、有機JAS認定を受けた自社農園で育てる有機梅の通信販売や、オーガニックの梅干作りも行っています。

良質な赤土や山の斜面を活かした、歴史ある梅の産地

日本一の梅の産地、和歌山。中でも、皮がうすく柔らかな果肉をたくわえた南高梅は梅のトップブランドであり、その梅干しは高級贈答品としても人気です。今回プレミアムマルシェが訪れた紀州口熊野地方は、熊野三山へと通じる熊野古道のスタート地点であり、古くから梅の産地として繁栄。というのも、江戸時代に痩せ地は地租が免除され、藩主も梅の栽培を奨励・保護したことから、梅の栽培が広まったとされています。南高梅は山の斜面でも育つことから山の至る所で栽培され、良質な赤土によってふっくら大きな実を育み続けています。

木で完全に熟し、自然に落ちた南高梅を梅干に使用

5月中旬~6月上旬には、梅シロップや梅酒に最適な青梅の収穫が始まります。夏の季語でもある青梅は、そのフレッシュな香りが特徴。収穫時期を見極めながら、一粒ずつ手で収穫します。6月中旬になると、梅干しに最適な完熟梅の収穫がスタート。といっても、青梅のように枝からもぎ取るのではなく、山の斜面に敷き詰められた収穫ネットの上へ完熟して自然に落ちた梅を拾うのです。

完熟した南高梅は黄味を帯び、陽の当たった部分には鮮やかな紅色がさすようになります。翌日になると傷んでしまうほど熟しきっているため、収穫後すぐ水に浸して汚れや虫を取り除き、乾燥させてから塩漬けに。かつては、梅の入ったカゴを両肩に担いで梅畑と作業場を50往復し、その日のうちに急いで塩漬けしていたのだそう。

ちなみに、深見梅店の自社農園で有機栽培している南高梅は農薬を使っていないため、収穫してそのまま食べることも可能。香り高い完熟梅はとてもフルーティー、少し酸味のあるスモモのような味わいです。スイカと同じ糖度をもつほどで、地元の子ども達が集まる収穫体験では、取ったそばからパクパクと丸かじりする子が後を絶たないのだとか。

通常3ヵ月のところを1年かけて塩蔵熟成

梅と塩を交互に入れ貯蔵すると、2週間ほどで“梅酢”が貯まります。水を一切加えていないため、液体の正体は、塩と梅から出たエキスのみ。一般的な梅干し店では梅酢の中で3ヵ月ほど熟成させますが、深見梅店では4倍の1年もの歳月をかけ、しっかりと塩蔵熟成させています。これは、梅にしっかり塩を馴染ませた方が美味しくなるから。たっぷり手間ひまをかけて、創業当時から続く製法を大切に守っているのです。

※このクエン酸やリンゴ酸、ポリフェノールをたっぷり含んだエキスを捨てるのは忍びないと、深見梅店では自社農園産の有機梅から出た梅酢を使用した「農薬を使わない無添加梅酢」も販売しています。

天日干し、そして樽での熟成期間を経てお客様の元へ

その後、春と秋の2回に分けて梅の天日干しを行います。これは、しっとりとした梅干し作りに最適な“良い風が吹く”季節であり、夏は日差しが強く梅が日焼けしてしまうからだそう。木のせいろに麻布を敷き、屋内の干場で風や日光の様子をみながら天日干しを行います。「梅干し作りの工程では、梅の香りを楽しめる塩漬けと、梅を干すタイミングを見極めるのが好きですね。プラスチックケースの上で干したこともありますが、理想の肌感が出なかったので、結局昔ながらの製法に戻しています」と話すのは、深見梅店代表の深見優さん。

天日干しが終わった梅干しは梅樽に入れられ、さらにおいしくなるよう半年以上の時間をかけて熟成。3年以上熟成させた特別な梅干しでは、梅に含まれるペクチンが溶けだして梅酢がプルプルのゼリー状に変化し“しょっぱ美味しい”一粒を味わうことができます。

また、梅干しのしょっぱさが苦手な方に向け「減塩調味梅干し」も製造。一般的には水や湯に梅を漬けて塩分を抜き調味することが多いですが、深見梅店では水による塩抜きを行わず、化学調味料不使用のオリジナル調味液に漬け、梅の栄養がなるべく残る製法で減塩・調味しています。

口熊野が“オーガニックの梅の郷”になってほしい

70年以上続く梅干専門店の四代目である深見さんが南高梅の有機栽培を始めたのは、2003年頃のこと。周りの多くが梅農家・梅干し業者という環境で生まれ育ち、「みんなとは違う農業がしたい!」と思い立ったのだそう。また、農薬のにおいに違和感を覚え、愛犬が除草剤散布後の場所を散歩して体調を崩した経験もあり、安心・安全な梅を一から作りたいと考えたのだとか。

「無農薬・無肥料で育った有機南高梅は取れ高が少なく、見た目にスス(黒い斑点のこと)もあるので、市場では価格や買い手が付きにくいんです。農薬(消毒)でススの発生を抑えたり洗って薄くしたりも可能ですが、ススは人体に害がないのでそのままにしています。

現在、南高梅における有機梅の割合はわずか1%ほどですし、上富田町でも有機栽培に取り組んでいるのはうちだけ。和歌山県内でも10軒あるかないかですね。深見梅店で使う南高梅も、県内の生産者さんから仕入れる一般栽培の梅と自社農園で栽培した有機梅との比率は8:2と、圧倒的に少ないのが現状です。

ですが、割高でも安心・安全な梅干しが欲しいというお客さんは日本でも増えていますし、有機梅が売れる状況ができれば、口熊野の梅農家が有機栽培に挑戦してくれるかもしれません。また、日本の有機JAS認定は世界でも通用するので、オーガニックやマクロビオティックに関心の高い海外への輸出も、積極的に増やしていきたいですね」。

深見さんに良い“梅仕事用の生梅“の選び方について尋ねたところ、「梅の入ったビニール袋が汗をかいていないかどうか」をチェックして欲しいとのこと。また漬け込んだ後のカビが気になる方は、漬け込む時に梅や瓶を焼酎で消毒し、毎日「おいしくな~れ」と瓶を振ってあげるのがおすすめだそうです。

ヤンマー×都市養蜂?! 地上70mの屋上で採蜜を行う「梅田ミツバチプロジェクト」

梅田のミツバチがもたらす、フレッシュな生ハチミツと都市緑化の未来

日本の市場に出回るハチミツのうち、国産は5%程ともいわれています。それは、安価な外国産ハチミツに押されて儲からない、採蜜に労力がかかる、さらには、養蜂家が高齢化し生産者数が年々減っているという、ハチミツを取り巻く環境が大きく影響しています。そういった中、大阪の通称“キタ”と呼ばれる繁華街の中心地にある、ヤンマー本社ビル12階「梅田ミツバチプロジェクト茶屋町養蜂場」では、都市養蜂そして質の高いハチミツを採取することに成功しています。

都会のミツバチが集めてくれるピュアな“百花蜜”

ヤンマー本社ビル12階社員食堂「プレマルオーサカ」中央の庭園にある、「梅田ミツバチプロジェクト茶屋町養蜂場」。ここは、ヤンマーの支援するNPO法人梅田ミツバチプロジェクトが運営する都市型養蜂場です。全国の政令指定都市の中でも特に緑が少ないといわれる大阪、かつ、ターミナル駅や高層ビルなどが立ち並ぶ梅田のど真ん中で「おいしいハチミツが採れる」と聞くと、多くの方が驚かれるかもしれません。しかし、ミツバチの行動範囲は半径2~3キロもあり、淀川河川敷や大阪城公園、街路樹、神社仏閣の境内で育つ樹木などから蜜を集めることが可能。農薬の影響が少ない、さまざまな樹木や花から集められる“百花蜜”を楽しむことができるのです。

小さくて健気。ミツバチは優しい生き物です

蜂は人を攻撃し、無差別に刺すイメージがあるかもしれませんが、ミツバチは刺激しなければほとんど人を刺すことはありません。「針を持つ生き物なので気をつける」という意識を持ちつつ、巣箱の近くではゆっくり動き、出入り口となる巣箱の前へ立たないようにすれば良いのだそう。また、腕や顔にとまったときは、焦って手で払うのではなく、優しく息を吹きかけて飛び去ってもらうよう心がけるのがポイント。巣箱に触れる際は燻煙器などで煙を吹き込み、ミツバチがおとなしくなったタイミングを見計らって作業を始めます。

ミツバチを飼育する上で大切なのが、内検(ないけん)と呼ばれる巣箱内の確認作業です。女王蜂は元気にしているか、六角形の巣房の中に1つずつ卵を産んでいるか、ミツバチの餌となる蜜や花粉がしっかり溜まっているかなどを、目視で丁寧にチェック。仮に女王蜂を見つけられなくても、卵があれば“3日以内に女王蜂が産んだ”証なので、大きな心配は必要ないのだそう。

完全に役割分担されているミツバチのコロニー

ここで少し、ミツバチの世界についてご紹介します。ミツバチはコロニー(群れ)で暮らし、1つのコロニーには産卵担当の女王蜂1匹と、巣作り・掃除・警護・幼虫の世話・餌運びなどを行うメスの働き蜂、女王蜂の交尾のために存在するオス蜂が存在しています。卵の段階ではどのメスも個体差は同じですが、卵の段階からローヤルゼリーのみを与えられ女王蜂として育つと3年ほど生存し、ハチミツと花粉を与えられ働き蜂として育つと50日ほどの寿命となります。

働き蜂は、卵で3日→幼虫で6日→サナギで12日ほど過ごすと羽化して、一人前の働き蜂に。与えられる役割は生まれてからの日数で決まり、最初の10日間は巣の掃除や育児、次は巣の門番、さらにはハチミツを羽であおいで水分を飛ばし糖度を上げる作業…などを経て、最期の10日間ほどで巣の外に出て蜜を探しに行く作業を任されます。蜜源を見つけた働き蜂は巣箱の中で「8の字ダンス」と呼ばれる動きをして、仲間に蜜のありかを伝達。8の字の弧の大きさや角度で花の場所と太陽との角度などを教え、街のどこに行けば良い蜜があるかを伝えているのだそう。

一方、ローヤルゼリーを与えられ働き蜂の倍の大きさに育った女王蜂は、オス蜂と交尾を行った後、毎日卵を産み続けます。女王蜂はそれぞれ独自のフェロモンを持ち、働き蜂は彼女が発する匂いで自らの所属するコロニーを識別。女王蜂が弱ってくると、働き蜂はその事態を察して特別大きな部屋(王台)を作り、そこで生まれた幼虫にはローヤルゼリーだけを与え、新たな女王の誕生を待ちます。そして羽化まであと2.3日という段階で、今の女王蜂は他の働き蜂を連れてコロニーを出ていきます。

もし、内検で女王蜂不在のコロニーを見つけたときは、巣に新聞紙を敷き日本酒などを振りかけて元の女王蜂のフェロモンを消臭し、働き蜂を別のコロニーへ移動させる作業を行います。これは、働き蜂の50日の寿命を全うさせ、既にあるコロニーを更に勢いづかせるため。都市養蜂家は卵の数やサナギの状態も目視でチェックして記録し、12日後に何匹のミツバチが羽化するのか、その数に対してどう行動すべきかを、季節や天候に合わせて対処していくのです。

ミツバチがいることで街に緑が増え、多くのツバメが訪れるように

このように、ミツバチのコロニーを維持し、良質なハチミツを採取するにはとても時間と手間がかかるため、「ハチミツが欲しい!」という想いのみで続けるのは難しいのが現状です。それでも日本各地で都市養蜂の和が広がりつつあるのは、“ミツバチがいることで街に緑が増える”という大きなメリットがあるから。つまり、ミツバチが蜜を集めると自然と受粉がおこり、結果として実がなったり種ができたりと、植物自体が元気になるのです。
※写真は、巣箱へ花粉をもちかえるミツバチたち。足元に黄色い花粉がついています。

「ベランダでイチゴを育てている人が、ミツバチが上手に受粉することできれいなイチゴを収穫でき、『来年はもう一鉢増やそうかな?』と思ってくれることで、壁面緑化にも貢献していることになるんです」と話すのは、梅田ミツバチプロジェクトの代表である小丸和弘さん。

さらには、農薬の影響が少ない都市部の蜜は質が高く、安心・安全なハチミツを採取することが可能。都市養蜂では、街にたくさんの花(蜜源)が咲く5~7月頭に採密時期を絞り込むことで、ハチミツを餌にしているミツバチへの負担も避けることができるのです。

梅田ミツバチプロジェクト茶屋町養蜂場の動画はこちら

ハチミツを通して“食への関わり方”を見つめなおすきっかけに

代表の小丸さんはデザイナーとして活動する中、壁面緑化につながる魅力的な取り組みをリサーチしていたところ、パリや銀座における都市養蜂の存在を知り「大阪でも実現できそうだ」とヤンマーに提案。するとトントン拍子に話が進み、自らが都市養蜂家として活動することになったのだとか。今では養蜂に加え、協力しあってハチミツを集めるミツバチの生態や、ミツバチがもたらす都市緑化の可能性を、養蜂体験イベントや子どもたちへの食育で伝える活動も行っています。

「1匹のミツバチが一生のうちに集めることができるハチミツは2~3gで、わずか小指の先くらいの量。つまり、30gの瓶をいっぱいにするには、10匹が一生をかけて集めたハチミツをいただくことになります。普段口にしているものがどうやってできているかを知ることで、食べ物への関わり方を考え直すきっかけになればと思っているんです」と話す小丸さん。

ヤンマー本社12階をはじめ、大阪の都市型養蜂場で採蜜されたハチミツは「大阪ハニー」で商品化され、どなたでも味わうことが可能です。非加熱・無添加・無加工のまま瓶詰めされたピュアな生ハチミツは、その華やかな香りと軽やかな味わいが魅力。熱を一切加えていないため、栄養素や香りも損なわれていません。その希少性から「幻」と表現されるほどのハチミツを、みなさんもぜひ味わってみてください。

梅田ミツバチプロジェクトで採蜜した「大阪ハニー」のハチミツは、Premium Marché Shopでも取り扱っています。

※在庫状況により、取り扱っていない場合もございます。予めご了承くださいませ。