TIPS

岩手県久慈地方の牧場でのびのびと育てられた赤身肉「短角牛」

「自分が食べたいと思ったから、短角牛を育てているんです」と話すのは、岩手県久慈地方で赤身和牛を育てている田村牧場の田村英寛さん。

国内和牛流通において年間1%ほどのシェアしかなく、希少性の高いブランド牛「短角牛」。茶色い体毛から「赤べこ」とも呼ばれ、赤身がおいしい和牛として注目を集めています。噛むほどに味わいが広がり、とてもジューシー。脂肪が少なくヘルシー志向の方にも人気です。

広い牧場でのびのびと育つ短角牛

田村牧場におけるこだわりのひとつが「周年放牧」であるということ。一般的に、短角牛は春から秋は山で過ごし、冬は里で過ごす「夏山冬里方式」で飼育されますが、田村牧場の繁殖牛(雄1頭と雌30頭ほど)と子牛たちは一年中放牧され、元気にのびのびと過ごしています。

牛にとって“本来の暮らしかた”とも言える周年放牧を可能にしたのが、久慈地方の恵まれた気候でした。夏は湿った北東風「やませ」のおかげで涼しいため、暑さが苦手な牛たちにとって快適そのもの。冬は比較的暖かく雪も少ないので、フワフワの冬毛をたくわえ、第一胃が牧草を消化する際に発酵(発熱)する体の仕組みを持った牛は、外でもへっちゃらなのだそう。

「なるべく自然に育てたいし」と話す田村さんですが、ストレスの少ない牧場で牛たちが暮らしたことで、田村牧場の個性ともいえる"味の濃い"短角牛が育まれたのです。

自然の餌をたっぷり食べた牛はさらにおいしくなる

田村牧場のさらなるこだわりが、土づくりから手がけて育てた餌と、他の牧場よりも長い肥育期間。

生後10~12ヵ月ほど育った短角牛は良質の赤身肉をつけるため、牧場から肥育用の牛舎へ移動します。一般的な黒毛和牛は狭い牛舎へ押し込められ、大豆や麦などの配合飼料を与え続け太らせることが多いのだとか。ですが、田村牧場の短角牛は牛舎を歩き回って運動しながら、自家製のデントコーン(飼料用とうもろこし)や飼料米などを食べ、通常(26~28ヵ月)よりも2~3ヵ月ほど長い時間をかけてゆっくりと育ちます。そうすることで、脂肪が少なく味の濃い赤身肉がしっかりと蓄えられるのです。

田村さんは午後に餌をやりながら、ちゃんと食欲があるか、寂しそうにしていないかなどを毎日チェックし、牛たちの体調を気づかっています。このように、「美味しいものを届けたい」という生産者の情熱そしてこだわりによって、私たちの毎日の食卓は支えられているのです。

自分が食べたいから育て始めた短角牛

元々田村さんの家は昭和23年に入植した開拓農家。ホルスタインや黒毛和牛を育てていましたが、10年前に味わった短角牛の味に惚れ込み、自分で育ててみたいと思ったのだとか。

「市場では黒毛和牛が人気だし、輸入自由化となった赤身のサーロイン牛は安い値段で売られている。子牛を育てる繁殖農家も高齢化しているから、将来は短角牛の生産が途絶えてしまうんじゃないかと思っている」と話す田村さん。

ですが、田村さんの元を訪れたブランド牛の生産者さんが、ヒレ肉の焼肉を食べて思わず「これ、持って帰りたいのですが」と交渉を始めたというエピソードや、かつての田村さんが短角牛を育て始めたように、この旨みを一度でも味わえるチャンスがあれば、欲しいという声はきっと今後も増え続けるのではないでしょうか。

田村牧場では、息子さんが短角牛の飼育を受け継いでくれそうだとのこと。赤べこたちの暮らす風景がこれからもずっと続くよう、プレミアムマルシェは短角肉の良さをこれからも発信していきます。

ちなみに田村さんのお気に入りは、塩と胡椒でシンプルに味付けしたモモ肉のレアステーキなのだそう。

田村牧場で育てられたこだわりの短角牛は、岩手県久慈市にある直営店「焼肉たむら屋」でお召し上がりいただけます。ぜひ皆さんも一度、旨みあふれる極上の赤身肉を味わってみてください。