CASE STUDY

本当に美味しいものの価値を見える化して届けたい。“国東さわら”のブランド化がもたらす「未来へ繋がる」漁業

サステナブルFUTURE魚・貝類

大分県と愛媛県に挟まれた豊後水道は、太平洋の暖流と瀬戸内海の寒流がぶつかり合ってプランクトンが豊富で、それを餌とするさまざまな魚が集まる漁場です。大分県の北東に位置する国東(くにさき)半島沖はこの豊後水道の恵みを受け、サワラやタチウオ、タコなどの魚介類が獲れることで知られています。

特に、10月から11月末までの短期間に獲れるサワラには脂がしっかりと乗り、他のサワラにはないモチモチ食感が味わえることもあることから、“国東さわら”としてブランド化を推進。ヤンマーマルシェは販路開拓そして販売促進のサポートをしています。

今回は国東半島沖でサワラ漁を行う中本さんと松本さん、そしてヤンマーマルシェの担当吉本さんに参加いただき、“国東さわら”がブランド化を始めたきっかけや、ヤンマーマルシェとの取り組みについてお伺いしました。また、“国東さわら”をメニューとして提供する「ろばた仁 別府」の首藤さんにもおすすめの食べ方をご紹介いただきます。

左より
大分国東漁業組合 松本秀行さん、中本友和さん
ヤンマーマルシェ株式会社 フードソリューション部 水産グループ 吉本 篤史さん

「一般的なサワラと全然違う!」ブランド魚にも勝ると感じた質の良さ

― “国東さわら”をブランド化させることになったきっかけを教えてください。

中本さん: 昔から国東の漁師はサワラを刺身や炙りにして、日常的なおかずとして食べています。「魚の中でサワラが一番旨い」と皆が口をそろえて言うほど、その味と質には自信がありました。 ただ、一時期からサワラの相場価格が下がりはじめ、自分たちのサワラはこんなに美味しいのになぜ値段が付かないのだろうと、漁師たちがどんどん不安になっていたのです。

そんなとき、ヤンマーマルシェの吉本さんと当時国東市役所林業水産課の担当だった平山さん、そして漁業組合の運営委員長である浜松さんから、サワラのブランド化についての話があったのです。

ヤンマーマルシェ吉本:
2019年だったでしょうか、大分県漁協国東富来支店を訪問した際、「国東で獲れる釣り物のサワラの魅力をもっと多くの人に届けたい。品質は良いはずなのに浜値が上がらない、これでは廃れてしまう」と相談を受けました。

そこで早速、漁師さん行きつけの居酒屋に集まって国東産のサワラを食べさせてもらったのですが、これが本当に美味しくて。私も日本各地でサワラを食べてきましたが、他のブランド魚と引けを取らないどころか、更に上を行っているぞと思えたのです。

相場価格をお聞きして「本当にもったいない!」と感じました。そこで、ヤンマーマルシェが付加価値の明確化などブランド化のお手伝いをして、さらに販路拡大の支援もさせていただくことを決めました。
このサワラはもっと高いポジションにいるべきだ、と感じたのです。

地元漁師が「魚の中で一番旨い!」と唸る“国東さわら”

― 他のサワラと“国東さわら”の違いはどこにあるのでしょうか?

中本さん:
まずは“国東さわら”が育つ漁場の良さが挙げられます。国東沖には豊後水道から常にプランクトンや小魚が入ってくるため、サワラに限らずさまざまな魚がよく育ちます。小魚につられて大魚が入ってきますし、夏にはクジラもやって来るんですよ。瀬戸内海は潮の流れが穏やかなのも、よいサワラが育つ要因です。

加えて、“国東さわら”は一般的な網漁ではなく、魚へのダメージが少ない延縄(はえなわ)漁を行っていることも味に影響しています。サワラの餌となるイワシを針に1尾ずつ付ける作業をはじめとして、延縄漁はとても手間がかかります。しかし、サワラを1尾ずつ丁寧に釣り上げることで身質を保ち味が落ちるのを防いでいるのです。

釣り上げたサワラは1尾ずつ手で外し、船上で活け締めしていきます。すぐに血抜きを行い、直ちに海水氷へ入れます。血抜き直後のサワラはギラギラと緑色に光っていますが、10~15分ほどすると青黒く光ってきますので、そのタイミングで海から上げて箱に立てるのがベストなタイミングです。

餌に恵まれた漁場、魚にダメージを与えない延縄漁、船上での活け締め作業。これら3つの条件が、“国東さわら”の甘味や旨味、きめ細かい肉質、そしてモチモチした食感を育んでいます。

また“国東さわら”と名乗るためには脂肪率10%以上を満たす必要があり、だからこそ、サワラにしっかり脂が乗る、10月から11月下旬という僅かな期間でしか獲ることができないのです。

“国東さわら”のブランド化で変わる漁業の現場

― ブランド化に取り組んでから、何か変化はありましたか?

中本さん:
福岡市場に出しているサワラ全体の値段が上がりました。我々がヤンマーマルシェさんとタッグを組んで“国東さわら”のブランド化プロジェクトを進め、新たな販路を開拓していることは、福岡市場側ももちろん把握しています。この取り組みを知っているからなのか、“国東さわら”の条件に達しないサワラも、以前より高い値段がつくようになったのは嬉しいです。

ヤンマーマルシェ吉本:
魚には相場がありますが、あえて“国東さわら”は固定価格を決めていて、その価格情報はしっかり周りへも発信しています。

また、“国東さわら”ブランド化プロジェクトは比較的若めの漁師8名で行っているのですが、活動当初は「こんなことをして本当にサワラに値段がつくのか?」といった疑いの目が多かったですね。我々が梱包作業をしていると、先輩漁師たちが様子を見に来られていたこともありましたし、中本さん達も実際のところ初めは半信半疑だったでしょう?

中本さん:
半信半疑というか、「疑」しかなかったですね(笑)。ただ、今は他の漁師へ「“国東さわら”をやってみませんか?」と声をかけたら、チャレンジしてみたいと答えてくれる漁師もいるのではないかと期待しています。

漁師は魚を獲るプロ、ヤンマーマルシェは魚を売るプロ

― ヤンマーマルシェの販路マッチングサービスへ期待していることを教えてください。

中本さん:
自分たちは魚の売り込みが出来ないので、ヤンマーマルシェさんのもつ販路や営業戦略を期待しています。吉本さんの売り込み計画に沿って、我々漁師は“国東さわら”の基準を満たす良いサワラを確実にお届けできればと考えています。

ヤンマーマルシェ吉本:
ヤンマーマルシェはあくまでも「魚を売るプロ」としてプロジェクトへ入らせていただいていますので、そこは私たちへお任せください。

漁師のみなさんは、時化(しけ)の時でも常にいい“国東さわら”を提供してくださっています。ヤンマーマルシェとしては、サワラの底値を上げてその想いに応えたい。ですので、積極的に売り込みをかけ、短い漁期の中で実績を積み上げていきたいですね。

消費者からの反応を直接知ることが漁の励みになる

― 売り先からの反応は何かありましたか?

ヤンマーマルシェ吉本:
サワラといえば、一般的には塩焼きや西京焼きのイメージがありますよね。ですが、“国東さわら”はぜひ刺身やお寿司で食べていただきたいです。

私が初めて“国東さわら”を刺身で食べたとき、その美味しさに驚きました。漁師さんたちもその味に自信を持っているのですが、実際の所、消費者の方はどのような反応をするのかが知りたくなったのです。

そこで、僕と中本さんと当時国東市市役所の担当であった平山さんとで、飲食店さんへ“国東さわら”を持ち込みました。その場で刺身に調理していただき、ご来店中のお客様に召し上がっていただいたところ、ものすごく反響が良かったんです。

中本さん:
今までイベントへ参加してお客様へ魚を売った経験はあったのですが、吉本さんのように直接飲食店へ持ち込んだことはありませんでした。ですので、目の前でお客様が食べて喜んでくださっている反応を見たとき、自分たちの「美味しい!」という感覚が間違いではなかったことを確信しましたね。

松本さん:
網で獲りそのまま放置されたサワラと、延縄で釣り上げ船上で活け締めと血抜きまで行ったサワラとでは切った時の身の色が違いますし、味も全く異なります。並べて食べ比べていただけたらきっとわかっていただけるので、一度そういう機会を設けたいですね。

安定供給できる体制を整え、“国東さわら”を世界へアピールしたい

― 現在課題に感じていらっしゃることはありますか?

中本さん:
時化(しけ)の日はありますし、台風が来ると漁に出ることが出来ません。そして常に餌を追って動き回るサワラが相手ですので、漁獲量の差が日によって出てきてしまいます。そういった時に備えて、獲ったサワラを保管する冷蔵庫がないことですね。

ヤンマーマルシェ吉本:
ブランド魚を世に広めるにあたって、安定供給できる体制を整えることはとても重要です。現在は発注数でコントロールしていますが、本来であればしっかりした冷蔵庫を確保し、2日先などを見越して漁獲量を積み上げていくのが理想です。鮮度・品質にこだわった水揚げ処理をしていただいているので、1日冷やしこみ、休ませて、より旨味が増した“国東さわら”をお届けできるようにもなります。

自然相手のものですので、状況次第では未納になるかもしれない点は予めお取引先にもお伝えしています。ありがたいことに、獲れた分だけお届けすることや、漁師さんとサワラのブランド化プロジェクトを行っているという趣旨をご理解いただいた上で、お取引させていただいています。

― 今後の展望をお聞かせください

中本さん:
一番の狙いは、漁師が自信をもってつけた値段でお客さんも納得して買ってくださるような状態にまで、“国東さわら”の市場価値を高めたいですね。そして将来は世界へ羽ばたいてもらいたいと思っています。

ヤンマーマルシェ吉本:
ヤンマーマルシェは、漁師さんのこだわり全てが美味しさにつながっているというメッセージをしっかり言語化し、“国東さわら”の付加価値をどんどん発信すべきだと考えています。 というのも、国東の漁師さんって、活け締めや血抜きなどの下処理へ手間をかけていることなどを当然と思っていらっしゃる節がありまして。でもこれって実は、他のサワラと差別化できる立派なアピールポイントなのです。

今後は “国東さわら”のブランド力を高め、スーパーで他の魚が並んでいてもお客様は自然と“国東さわら”を手に取ってくださる、そんな未来がやって来ることを期待しています。

料理人の目から見た“国東さわら”の魅力

大分県別府市北浜で昭和50年から続く「ろばた仁 別府」では、サワラが旬を迎える10月から11月末までの間、“国東さわら”を味わうことができます。この魚の魅力について、店のオーナーの首藤登さんにもお話を伺いました。

―  料理人目線で感じた“国東さわら”の良さをお聞かせください。

一言で言えば、魚体が本当に美しいですね。目利きの漁師さんが一尾ずつ選別して送ってくださっているので、身の肥え方も安心です。お店で出せるクオリティのものが間違いなく届くので、とても満足しています。

― 「ろばた仁 別府」ではどのような調理法で出されていますか?

“国東さわら”は、一般的に流通しているサワラと比べたら脂の乗りが全く違います。ですので、身や脂の美味しさがより際立つよう、さっと炙ってお出しすることが多いです。あとは刺身や天ぷら、塩焼きなど、シンプルな調理法で提供しています。バター焼きにしても美味しいと思いますよ。

― お客様からの反応はいかがでしょうか。

サワラを食べたことがない、というお客様もたくさんいらっしゃいます。そんな方から「初めて“国東さわら”を食べたけれど、とても美味しかった!」というお声を多くいただきます。

特にサワラのお刺身はスーパーでの入手が難しいですので、当店へお越しいただきお品書きを見て、「サワラのお刺身って食べたことがないけれど、せっかくだし注文してみようかな」と思っていただける、そんな場所になれると嬉しいですね。

― “国東さわら”やヤンマーマルシェへ対して、今後期待することはありますか?

取引先や仕入れ先とは、信頼関係が全てだと思っています。当店がいくら美味しい魚をお客様へ食べていただきたいと思っても、良い魚を仕入れることが出来なければ、店の経営は成り立たちません。

もちろん市場にも良いサワラは出回っていますが、「手に入るか・入らないか」というのは別の話になってきます。しかしヤンマーマルシェさんにお願いすれば、漁師さんが選定した良い状態の“国東さわら”が確実に届くという安心感があり、料理人としては非常にありがたいです。

自分たちの魚をベストな状態で食べてもらいたい漁師さんと、美味しい魚をお客様に提供したい飲食店がwin-winの関係になれるよう、これからも仕入先とは信頼関係で付き合っていきたいですね。

ヤンマーマルシェの販路マッチングの取り組みはこちら

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